第3章「吸収」は、栄養吸収の入口、小腸の構造からお話します。
栄養は小腸から入ってくる
栄養素の取り入れ口である小腸。吸収はその表面の細胞(上皮細胞)から行われます。小腸の長さは約6メートル、たくさんのヒダ状構造で面積を広げて栄養をムダなく吸収します。
その面積は表面上に広げると30平方メートル、バドミントンコートの半分にもなります。腸の表面は「絨毛(じゅうもう)」と呼ばれる無数の突起があり、やわらかいじゅうたんのよう。絨毛を拡大してみてみると微絨毛と呼ばれるさらに細かいじゅうたんのようになっていて、吸収はこの表面から行われます。
「神の手」を助ける腸内細菌
反対に、体内で必要としない栄養素や異物などは取り込まれず、体外に排出されます。細菌やウイルスといった外敵から身を守るために免疫システムが備わっています。外敵と判断したものには、厳しく対応するのが免疫システムです。
では、食べ物はどうでしょうか。食べ物も免疫システムの標的になりますが、それでは栄養が摂れないので、厳しいはずの免疫を寛容しています。これを経口免疫寛容(けいこうめんえきかんよう)といいます。
「本当はNGだけど、いつも食べているからいいよ」と許してくれる大らかさがある一方で、病原菌はシャットアウトするといった見事な選別をしています。このようなことから、腸は「神の手」とも呼ばれているのです。
ですから、この優れた選別機能が動かなくなると、必要な栄養素が取り込まれない、有害ミネラルがきちんと排出されないなど、大変な事態がおきてきます。生活習慣病や心の病にもつながってしまいます。
この重要な「神の手」選別機能に関与しているのが、200種、100兆個以上もいるといわれる腸内細菌です。
腸粘膜に穴があく「リーキーガット症候群」
腸内細菌が十分に働いていない状態だと、腸は粘膜を正常に保てなくなり、腸粘膜に穴があいてしまうことがあります。免疫力がきちんと育っていないと命にかかわるようなことにもなりかねません。たとえば乳幼児の場合、食物アレルギーを発症する危険性が高まるのです。
腸粘膜に穴があき、腸から食物の分子や腸内細菌、病原菌などが体内に漏れ出ることを「リーキーガット症候群」といいます。リーキーガット症候群になると、栄養素は消化不十分なまま腸管から体内に入ります。通常、タンパク質はとても小さな分子に分解されて吸収されます。ところが、腸粘膜に穴があいていると、大きな分子のまま体内に侵入してしまいます。これが食物アレルギーの原因になっているとみられているのです。
周りの菌と大らかに接する
このように腸粘膜に穴があくと、大きな不調を身体に抱えることになります。腸に穴をあけさせないためには、腸内細菌を増やして丈夫な腸粘膜をつくることです。それには、「善玉菌」「ちょい悪菌」問わず、細菌を体内に取り入れる必要があります。身の回りの菌とは、おおらかに接しましょう。それだけで腸内細菌叢は豊かに育まれ、免疫力も強化されます。
抗生物質や食品添加物、化学物質などを不用意に入れてしまうと腸内細菌や腸粘膜を痛めつけてしまいます。また、大量の飲酒や亜鉛などのミネラル不足からも、腸粘膜に穴が開きやすくなるので気をつけてください。
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