腸は、小腸と大腸からなり、長さは7~8メートル、広さは32メートルあります。そこには100兆個もの腸内細菌がいます。
腸と腸内細菌は協力して、健康を左右する7つの働きを行っています。このシリーズでは、その働きを1つ1つ探っていきます。
①合成…さまざまな酵素、ビタミン、ホルモンを作る
②消化…食べ物を細かく分解する
③吸収…栄養素を体内に吸収する
④排泄…不要なものを体外へ排出する
⑤解毒…化学物質を分解・シャットアウト!腸の粘膜組織や腸内細菌が、解毒を行う
⑥浄血…サラサラに保つ!よい腸内環境が腸内腐敗を防ぎ、きれいな血液を作る
⑦免疫…リンパ球70%が集合!腸内細菌と協力して、腸の免疫細胞が病原菌やウイルスから、身体を守る
腸のはたらき~その1合成~
腸と腸内細菌がつくるもの、その①酵素
「酵素」とは、私たちの生命を維持していくために欠かせないものです。食べた物を消化吸収するのはもちろん、呼吸したり、筋肉を動かしたりと、生命活動に関与しています。
中でも、食べたものを栄養素に分解してくれる大切な消化酵素。これは、腸と腸内細菌が協力して作り出しています。たとえば、私たちヒトの酵素では分解できない食物繊維も腸内細菌には分解できる酵素を持っているので、その力を借ります。
食品からも酵素はとれますが、加熱するとその働きは失われますし、生でとっても胃酸でやられます。栄養素にはなりますが、酵素として体内で機能することは基本的にできません。
つまり、酵素がつくられるところは腸と腸内細菌がメインとなるということです。ですから、これらが活発に働けるように常に良い腸内環境を意識することがとても重要です。
■酵素を減らす要因■
腸内細菌数が少ない環境、お酒やたばこ、過食、ストレスの多い生活習慣、食品添加物、医療品の使用、活性酸素を誘導するもの(紫外線、電磁波、レントゲン、ストレスなど)
腸と腸内細菌がつくるもの、その②ビタミン
美しさを保つのにビタミンは重要です。ビタミン剤を飲まれている方も多いと思いますが、腸内の細菌たちがビタミンを作ってくれているとこをご存知でしょうか。
腸内細菌には以下のビタミンを作り、その機能を働かせます。
チアミン(ビタミンB1)
●糖質の分解を助ける
●精神を安定させ、成長を助ける
リボフラビン(ビタミンB2)
●細胞の再生やエネルギーの代謝を助ける
●健康な皮膚や髪、爪を作る
ナイアシン(ビタミンB3)
●糖質・脂質・タンパク質の代謝に重要
パントテン酸(ビタミンB5)
●脂質・糖質・タンパク質の代謝を助ける
●ビタミンB6や葉酸とともに免疫に働きかける
ピリドキシン(ビタミンB6)
●健康な皮膚を作る
●神経伝達物質の合成に関わる
コバラミン(ビタミンB12)
●神経細胞内の核酸やタンパク質の合成や修復を助ける
●悪性貧血を防ぐ
ビオチン(ビタミンビタミンB7)
●髪と皮膚の健康を助ける
●疲労感や憂鬱なども関連
葉酸(ビタミンB9)
●貧血予防に重要
●タンパク質や核酸の合成を助ける
メナキノン(ビタミンK2)
●血液の凝固に関係
●骨の代謝にも重要
腸内細菌はこうした大切なビタミンを合成するのですが、腸内細菌のバランスが乱れると、ビタミン供給が減ってしまいます。
美しさを保つにも、やはり良い腸内環境は不可欠なのです。
腸と腸内細菌がつくるもの、その③ホルモン
ホルモンとは情報を伝達する物質で、身体の内外で起こったことを各器官に伝え、それぞれの機能を誘導する生理活性物質のことです。
ホルモンの種類は豊富で、アドレナリンやセロトニンなど神経伝達物質として働く物もあります。腸ではおもに、消化関連のホルモンが作られています。
さらに腸は消化に関するホルモン以外にも重要なホルモンを作る場です。別名「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンは脳内情報伝達ホルモンですが、身体全体のセロトニンの90%は腸にあり、脳にはたった2%しかありません。セロトニンは精神を安定させて幸せな気分にさせてくれるホルモンです。セロトニンは腸にあるEC細胞と呼ばれる細胞で作られますが、腸内細菌がこの合成に関連していることも分かっています。腸内環境を整えることで、消化吸収が効率よく行われるだけでなく、精神の安定にもつながるのです。
腸と腸内細菌がつくるもの、その④その他
その他多くの物質が腸内で生まれます。それにはやはり、腸内細菌が関係しています。病原菌毒素から腸を守る短鎖脂肪酸や、アンチエイジング成分であるポリアミン、抗酸化作用のある水素も腸内細菌が作っています。
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